異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「こむぎ。2人っきりになっちゃったね」

落ち込む私に、随分歳をとったこむぎがそっと寄り添ってくれる。こむぎも、人間にしたらもうお爺ちゃんだ。いつかこむぎも……
そう思うと、無性に寂しくなってきた。

でも、それは仕方のないこと。〝いつか〟を恐れるぐらいなら、〝今〟を大切にしよう。
そう思い直して、私はできる限り多くの時間をこむぎと過ごした。

それから数年後。こむぎは静かに息を引き取った。寂しさはもちろん大きかった。けれど、自分もこむぎも今を精一杯生きたと感じられて、心は穏やかにいられた。

こむぎはいわば、私達家族の幸せの象徴だった。










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