異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「はあ……」

本当は、看護師とも医師とももっと話がしたい。というか、すべきなのだ。そうでないと、自分の仕事がきっちりとやりきれない。

確かに、カルテと医師からの指示書きを見れば、表面上は取り繕える。だけど、やっぱり直接やりとりをする中で、さらに患者さんへの理解も深まるはず。

けれど、話しかけて応えてくれる看護師は少ない。医師達は忙しそうで、話しかければ迷惑そうにする人もいる。

それなら、患者さん本人と……と院内を歩けば、悪口を聞く羽目になったり、滝沢先生に捕まったりして、ますます厄介なことになりかねない。

「はあ……」

もう一度ため息をついて、窓の外を眺める。
面しているのは、病院の中庭だ。
桜の木の青々とした葉に、一面に広がる青空。
まだ朝食が終わってすぐのせいか、出ている人は誰もいない。

本当なら、何もなくてもワクワクしそうな5月のはじめの晴天。なのに、私の心は沈んでいくばかりだ。

どうしてこうなっちゃったのかなあ……
私はただ、ちゃんと仕事をしたいだけなのに。
もうずっと、何もかもうまくいかない。


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