異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「その書物の一節に、異世界から来たと思われる人物の記述があったはずだ。事実の合間にそんな夢物語を紛れさせるなど、どうなのかと思っていたが……」

「どんな話なのでしょうか?」

思わず尋ねると、ジロリと鋭い目を向けられる。

「本来、騎士団長であるブラッドにすら話すわけにはいかないが、これから動いてもらうことがあるかもしれん。このことは、お前の胸の内に留めておいてくれ。
事実と捉えていなかったから、細かくは覚えていないが、確か、その者が現れたことによって、国が繁栄したという内容だったはずだ」

ユーリの話もさることながら、ルイスの話もにわかに信じ難いものだ。

「本当にそのよう存在だと良いのですが……今のところ、彼女は見知らぬ土地に来て、戸惑っている様子です」

「異世界から来たかどうかはともかく、その者が困っているのは確かなんだろ?それならば、保護すよるり他ない」

なんだかんだ厳しいところのあるルイスだが、困っている人を放っておくような冷たい人間ではない。むしろ、一見冷たく見えがちだが、根本のところでは優しい人間なのだ。だからこそ、国を安定させられ、民から慕われる王太子なのだ。その決断に、ほっと胸を撫で下ろした。

「わかりました」

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