異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
昼食を終えてしばらく経った頃、再びドアをノックする音がした。やって来たのはブラッドだった。

「変わりはないか?」

「はい」

「これから、調理場に案内する。ルイス様より、調理場へ入る許可が出ているが、何をするにも料理長の指示に従うのが条件だ。それから、常に監視することになる。ユーリの正体が掴みきれぬ今は、全てを信用するわけにはいかない」

当然のことだろう。むしろ、調理場へ連れて行ってもらえるだけありがたい。
頭ではそうわかっているけれど、疑われているというのは、気持ちの良いものではない。私が今やるべきことは、少しでもここの人達の役に立って、信頼を勝ち取ることだと思う。

「いきなり現れた私を、調理場に入れてもらえるだけでもありがたいです。ご配慮に感謝します」

「それでは行くぞ」

ブラッドの案内で、調理場へ向かう。ここの建物の構造はよくわからないけれど、石造りのこの雰囲気は、やっぱり絵本で見たようなお城そのものだ。一度、外から全体像を眺めてみたいものだ。

< 58 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop