異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「怪我をされても知りませんよ」

「だと。どうする?」

そんなの、答えは決まっている。

「やらせてください」

剣道は、長年、自分の全てをかけて取り組んできた。突然迷い込んだ異国の地で、自分を見失わずにいられるのは、あの時鍛えられた精神のおかげだと思う。
まあ、ここに来る直前は、精神的に随分ボロボロだったけれど……

「わかりました」

いまいち納得はしてなさそうだったけれど、ブラッドの命令ならば逆らえないのだろう。ジョナスは早速準備をしてくれた。

「ユーリ。サイラスは、ここへ来てまだ浅い騎士見習いだ。この中では一番下っ端になる。とはいえ、侮るな。男である以上、力はユーリより上だ」

準備を進める中で、ブラッドが教えてくれる。
侮るわけがない。父は、いくら自分より格下といえども、決して油断はするなといつも教えてくれた。

「どちらかが剣を落とすか、まいったと言うまでだ。2人とも、いいな?」

サイラスは、十代中頃の少年だった。体の線はひょろっとしているものの、目は力強く、負けてたまるかという意志を宿している。

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