異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。

「ユーリといったか？」

ひと段落する頃を見計らって、声をかけた。初めて見る私が誰なのかわからず、わずかに警戒心を抱いた目でこちらを見てくる。

「はい」

見た目に反して、声音は女性らしかった。
私の動きを察知して、ブラッドがさりげなく近付いてくる。ブラッドの姿に気付くと、ユーリはわずかに警戒心を緩め、ホッとした視線を奴に向けた。自分を助けてくれた者に対する信頼感からだろうか……気に食わない。
ユーリの注意を引き付けようと、再び声をかける。

「昨日、見習いとはいえ、入団試験をパスしてきた騎士を、剣術で打ち負かしたと聞いたが、本当か？」

ユーリはこちらに目を向けたものの、再びブラッドに視線を向けた。その目は、この人は誰なのかと問いかけているようだ。

「ユーリ、クリスだ。普段は他の部署で働いているが、たまにこうして参加することもある」

ブラッドの説明に一つ頷くと、ユーリは再び私を見た。ブラッドの言葉に納得はしたようだが……やはり気に食わないな。