だれよりも近くて遠い君へ
目が覚めると、ベットの上にいた。
家のベットで、外はもう真っ暗になっている。
あのあとどうなったのか、全く分からなくて、
とりあえず一階に降りてみる。

「あっ、起きたね。おはよう。
 体はもう平気なの?」

 凪沙さんは、心配そうに眉を寄せて言った。

「すみません。もう大丈夫なんですけど、
 今どんな状況かわかってなくて、、、」

「ふふふっ、そうよね、
 春は、学校で喘息の発作起こしたのよ。
 いつもは出ないのに、結構大きいものだったら
 しくて、さくくんが、電話してくれたの。」

「そうだったんですね、ご迷惑をおかけしちゃっ
 てすみません」

「そんな、迷惑だなんて、思ってないわよ」
 
柔らかく笑ってくれた。
すごくホッとしたけど、そのあとの言葉は頂けない。

「ちゃんとさくくんに、ありがとうと、これから
 もよろしくを言うのよ」

だって。
嫌だよ。
さくの倒れる寸前の、私の名前を呼ぶ声が離れないんだよ。
必死だったような、強くて不安そうな声。
お母さんの『お願い』のせいで、あんなにしんどそうなんだよ。
解放したい。
解放されたいよ。

「もー、凪沙さんってば、さくのことは別にいいんだけどー。まぁ、今度お礼は言っておくよ」

 
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