愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
さっきの思い出話を聞いていて思ったけれど、私を甘やかしていたのって佑本人じゃないかしら。いつも私優先で、私の思う通りにしてくれようとする佑。絶対、クリスマスのあれこれも、佑が傑をなだめて私を優遇してくれていたんだろうなあなんて今更思う。チョコプレートだって、きっと半分くれたに違いない。

「私も一緒に企画したい!セブ島だよ。初めて行くから、めちゃくちゃ楽しみなんだもん。旅行計画練ろうよ」

私が主張すると、佑はふっと微笑んだ。それから、困ったように嘆息する。

「俺は咲花が楽しめるようにプロデュースしてやりたいんだよ」
「佑はいつだってそうやってお兄ちゃんぶるんだから。私、また我儘な妹になっちゃうよ」

甘やかされるのは心地いいけど、私だって佑に守ってもらってばかりじゃ面白くない。新婚旅行はふたりで考えて企画したいもの。

すると、佑が私の手からぱっとマグカップを取り上げた。
自分の分とあわせてローテーブルにことんと置く。それから、ぎしっとソファをきしませ、私に近づいた。

「佑?」

間近く見下ろされ、私はたじろぐ。なんだろう。佑の真顔からは何も伺い知れない。
ついた手に体重がのり、ソファが再びきしんだ。腰をあげ、膝をソファに乗り上げる。佑は私に覆いかぶさるような格好だ。
自然、私は手を後ろにつき、わずかに後方に退いた。しかし、佑は私を逃すまいとさらに顔を近づける。

「“お兄ちゃん”はこんなこと、しないだろ」

目を細め、佑が言う。鼻と鼻がくっつきそうな距離だ。
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