愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
【それならよかった。
よろしく頼む。】

短いメッセージのあと、少しして追加でメッセージ。

【急だが、来週末には婚約の挨拶として席を設ける。
今更だろうが、付き合ってくれ】

私はOKというスタンプをひとつ押し、スマホを置いた。

ふうとひとつため息。嬉しいような、複雑なような……。まだはっきりしない気分。浮足立つような心地はするけれど、どこかでこんな風に結婚してしまっていいのかしらと思っている。

佑の前から消えてしまった婚約者は、今どこで何をしているのだろう。
私は会ったことがない彼女。陸斗建設創設期、おじいさまの代からお世話になっている地主の娘だったそうだ。佑よりひとつ下で、私よりひとつ上。それこそ、幼い頃から婚約が決まっていた。

もし、私の方がその女性より先に生まれていたら、佑の婚約者は最初から私だったのだろうか。以前はよくそんなことを考えた。どうにもならないことだと理解しながらも考えずにはいられなかった。

彼女と佑がどんな交際をしていたのかはわからない。
だけど、ほんのひと月前までは、来年の結婚の話を聞いていたし、そうなるものだと思っていた。
それが突然の失踪……。

佑はかなりショックを受けているんじゃないだろうか。真面目な佑のことだから、自分の責任だと思っているかもしれない。ふたりの間にどんな事件があったのかはわからない。
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