愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「考えられないか?俺とは」

尋ね返す前に、唇と唇が重なっていた。
唇から伝わる温度。佑の体温。
佑とキスしてる。
頭の中が真っ白になってしまって、驚いて動けない。
だけど、感じる熱は本物だ。本物の佑だ。私は目を閉じ、その幸福な感触を味わう。わけがわからないけれど、ただただ嬉しくて胸が熱い。
柔く重なった唇はすぐに離れた。

「悪い」

佑はそうつぶやき、身体を翻す。それ以上、何も言わないままシャワーを浴びに行ってしまった。

「え……?」

それだけ?いきなりキスして、「悪い」で終わり?
私は呆気にとられて、佑を見送った。初めてのキスの感触は、わけがわからなすぎて、もう覚えていなかった。

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