愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
先日、咲花にキスをした
結納の後、勢いで唇を奪ってしまった。
距離を縮め過ぎてしまったとは思う。だけど後悔はしていない。俺は咲花に触れたかったのだ。恋人として、妻として。

咲花の驚いた顔を見れば、俺の行動が一足飛びすぎたことは火を見るよりも明らかだ。いきなり俺が兄妹の壁を壊してきたことに、さぞ驚いただろう。
しかし、俺はもう咲花の兄という存在だけでは飽き足らない。咲花の夫になりたいのだ。

結納の席で咲花は、子どもはまだ早いと言った。考えられないと。
それが咲花なりに取り繕った言葉なのか、本心なのかは俺にはわからない。
だけど、考えてほしかった。俺との将来を、今のままでなく、愛し合う者同士として過ごしてくれるのか。
キスをしてしまったのはそういう理由もある。俺じゃ駄目なのかと、気持ちが急いてしまった。

咲花はあの日から普通に何事もなかったかのように振舞ってくれている。変に避けたりされないことにほっとする。
咲花が俺を好きでいてくれるのか、正直に言えば自信がない。傑の言う通り、咲花が子どもの頃から俺に恋してくれていたと言うなら、こんなに嬉しいことはない。
だけど、咲花本人はそんな素振りを一切見せてはくれないのだ。昔から変わらない妹のポジションで笑いかけてくるだけ。
そんな咲花に焦れる一方、男としてまずは言葉にすべきだと思っている。自分から伝えるべきだと。
咲花が好きだと。親が決めたから一緒になるんじゃない。咲花が好きだから、この先も一緒にいたいのだ、と。
それなのに、キスを先にしてしまったのは痛恨のミスといえるだろう。この点はため息だ。
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