愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「た、佑~?」

一生懸命茶化そうと笑って見せる咲花。だけど、声は震えているし、首筋が赤いのが視界に入る。咲花も照れているし、ドキドキしているに違いない。

「心配した」
「もう、過保護」
「咲花と連絡がつかなくて、こんなに焦るとは思わなかった。俺もびっくりしてる」
「ごめんね。心配かけたねえ」

咲花は母親みたいな口調で、笑ってみせる。俺の胸を押し、身体と身体の間に隙間を作ろうとするので、させまいと回した手に力を込めた。

「佑ったら、最近変だよ~?どうしたの?」

この濃密な空気をごまかしたいのか、一生懸命軽い口調を心がける咲花。俺は睫毛の数までわかる距離で、じっと見つめた。

「変か?妻のことを大事にしたいと思ってるだけだ」

俺はごまかしたくない。茶化したくない。咲花と心を繋げたい。
咲花が俺と同じ気持ちなら、応えてほしい。
赤かった咲花の頬がさらにぶわっと赤くなった。

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