愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
翌朝、目覚めて隣で眠る咲花を見て心底安堵した。よかった。咲花がいる。
しばらく寝顔を眺めていると、伏せられた睫毛が揺れ、ダークブラウンの瞳が見えた。

「おはよう……」
「おはよう」

咲花は綺麗な目を両腕で隠し、呟く。

「あんまり見ないで。顔、むくんでそう」
「いつもと変わらず綺麗だよ」

本音で褒めたつもりなのに、咲花は布団を頭までかぶり、呻いている。恥ずかしい様子だ。
布団の上から咲花を抱き締めると、中でもぞもぞと暴れている。今度は息苦しいらしい。

「佑!悪戯やめて!」

ぷは、と顔を出して俺を睨む咲花。その額に優しく口づけした。壊れ物を扱うように。

「咲花の顔が見たかったから」
「もう」

咲花が赤い頬で眉をひそめるけれど、それは嫌だからではない。俺たちはもう一度、ちゃんとキスを交わした。

「本当に、苦労をかけることになると思うよ」
「平気」

咲花が目尻を赤く染めて微笑む。

「佑がいるなら、私、この世界中を敵に回したって戦える」
「頼もしいな、咲花は」

俺は笑った。俺の方こそ、どんな敵も怖くない。咲花と生きていくためなら、なんだってできる。

「俺にも守らせてくれ。世界で一番大事な嫁さんを」
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