愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
7.幸せのおとずれ



「お待たせ」

改札を抜けて出てきた私に、先に最寄り駅に到着していた佑が片手をあげる。
今日は私と佑の帰宅の時間が近そうだったから、駅で待ち合わせ一緒に買い物をして帰ることにしていた。

「待った?」

佑は穏やかに首を横に振る。

「いや、俺もさっき着いたところだ。ところでドラッグストアで何か買うって言ってなかったか?」

その言葉に、私ははっと思いだす。

「お風呂の洗剤!言ってくれなかったら、忘れてた。ありがとう!」
「ついでに洗濯洗剤も買っておかないか。もう少しでなくなりそうだ」
「賛成」

ごくごく当たり前の会話をしながら、駅の階段を下り、ロータリーに出る。

三月がやってきた。日が少し長くなったせいか、夕刻だけど空はまだ真っ暗ではない。薄闇に、商店街の灯りが浮かんでいる。空気中の湿度が高いのかうっすら霞がかかり、小さな街の灯は幻想的に見えた。
春が近づいてきている感覚がある。ここ数日特に温かな日が続き、マンション近くの木蓮が蕾を大きくしていたことも思いだす。春がくるのだ。

引っ越してきてふた月が経った。
私と佑は当たり前のカップルみたいに暮らしている。都心部まで少し時間のかかる緑豊かな街は、静かで家族連れが多くて、のどかでいい土地だ。

夕方のドラッグストアは帰宅する人たちで混み合っていた。

「あ、燃えるゴミ用の袋も買わなきゃ」
「そうだった。前住んでいた地域より、こういうところは面倒だな」

この街はゴミ袋が有料で、ちょっと高い。買い忘れてしまうとゴミが出せないのだ。

「でも、ちょっと歩くと大きな公園はあるし、緑が多くて私は好きだなあ」

私は言いながら、食品コーナーに向かって歩き出す。
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