愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
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三月も終わる頃、都内で桜の開花宣言が出た。
結婚して初めての春だ。そして、この街に来て初めての春。近所の川縁に遊歩道があると市報で知り、私と佑は散歩することにした。
花見をする人で遊歩道は混み合っていた。とはいえ郊外なので、都心部の桜の名所より、幾分人手は少なく、のんびりと眺めることができる。さらにシートを敷いて宴会するような場所がないのも、混雑にならずによさそうだ。
ちょうどいいので、週末に傑と里乃子さんを招いて、四人でお花見をすることにした。
お弁当を広げられる場所は少し離れた公園しかないらしいので、駅前や遊歩道の桜を見て散歩し、その後我が家でお花見パーティーをしようということにした。
傑はずっと私と佑のお祝いの席を設けたいと言ってくれていた。こういう形だけど、四人で食事をできる機会はずっと私もほしかったのだ。
「のどかでいい街だな」
週末にやってきたふたりは駅前を見渡して言った。
都心部に住んでいる人間からしたら、確かにのどかだ。里乃子さんが私に言う。
「住みやすそうですね。大きなスーパーもあったし」
「そうなの。スーパーはポイントでね。地元の野菜を取り扱うコーナーもあって、結構安いのよ」
思わず得意げに説明すると、傑がふっと笑った。
「咲花、奥さんやってるんだなあ」
「そ、そりゃ、奥さんよ。ねえ、佑」
「ああ、自慢の奥さんだよ」
さらっと褒められ、頬が熱くなった。傑たちとはいえ、ふたりきり以外で愛情を示されると猛烈に恥ずかしくなる。