愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「楽しそうでよかったよ」

傑がしみじみ言い、私は念のため確認する。

「私と佑は平和だけど、傑はご両親から何か言われていない?」

佑が陸斗から離れるかもしれない今、竜造おじさまは傑を手元に呼び寄せることに躍起になっているんじゃないかと心配していた。竜造おじさまは一族主義が強く、前から傑を陸斗建設に入れたがっていた。この機に、その交渉に出ているかもしれない。

「母さんからたまに実家に戻れって連絡があるくらいかな。兄貴と咲花のことについては何も言ってこない」
「俺が親父たちと疎遠になったと傑が知れば、傑は戻ってくるどころか俺の方につくって思ってるんだろうな」

佑が嘆息して言った。確かに傑の佑への信頼は強い。ともすれば、強引な手法を取ってくる両親よりもだ。

「俺は今の仕事と里乃子との生活を邪魔されたくないから、何を言われても動じないつもりだよ」

傑は割とあっさりと答え、里乃子さんが横で嬉しそうに頬を染めている。
そうだ。傑も呼び戻されれば、都合のいい婚約者をあてがわれてしまうかもしれないのだ。里乃子さんとの関係を守るためには、実家の要請は受けないだろう。

「兄貴としてはどうなんだ?陸斗自体は辞めたくはないんだろ」
「辞めたいとは思わない」

兄弟の応答に、私がどきりとした。佑は一度言葉を切った。
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