愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「咲花、料理できるのか」
「奥さんですから」

傑のツッコミに力こぶを作ってみせ、途中まで準備しておいた食材を調理し始める。
といっても、お刺身は買ってあるし、ちらし寿司とおひたしはできてるから、あとはお吸い物だけなんだけどね。
三つ葉を切って、手早く仕上げる。食卓の準備は、里乃子さんも手伝ってくれた。

「豪華だな。ありがとう、咲花」
「でしょう。食べよう食べよう」

お客様をもてなそうと薦める私は、足りない取り皿やビールを持ってきているうちに、だんだん目の前がくらくらしてきた。

なんだろう。朝からちらし寿司作りを張りきり過ぎたかしら。
それとも、貧血かな。あんまり貧血っぽくなったことないからわからないけど、目眩がおこる原因がわからない。
そういえば、ここ数日何度かこういう目眩があったような。

「あれ？」

ふきんを取りに行こうとして、立ち上がれずに椅子に座り直してしまった。
目の前が暗くなる。

「どうした？咲花」

佑が隣で声をかけるけれど、私の視界はまっくらだ。
おかしい。こんなふうになったことは、今まで一度もないかも。

「なんだろう……すごい立ちくらみがする」
「疲れたかな。少し、ソファで脚を伸ばしてみるか？」
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