愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
佑が私の肩に触れる。うんと頷くものの、なかなか立ち上がれない。

「ちょっと気持ち悪いかな……」
「洗面所行くか?」
「ん~、大丈夫」

どうにかソファに移動し、ふかふかの背もたれにどさりと背中を預ける。視界は元に戻ったけれど、疲れからかお腹が気持ち悪い。胃だけじゃなく、腸のあたりまで。
私、熱でも出るのかな。インフルエンザとかじゃないといいんだけど。

「ごめんね~、ちょっとここで休んでる」
「ああ、気にするなよ」

傑の横で里乃子さんが「あ!」と声をあげた。なんだろうと三人で彼女を見やる。

「どうした、里乃子」
「いえ……なんでもないです」

里乃子さんはあげてしまった声を恥じるように、小さな声で答える。なんでもなくなさそう……。

「里乃子さん?」

私が尋ねると、彼女はおそるおそる唇を開いた。

「その……妊娠の……初期症状に立ちくらみがあるなあって……思ったんですが」
「え?」

佑が反応した。三人がばっと私の顔を見る。
妊娠……そんなこと……あり得なくはない……。
両親との軋轢や急な引越しなどで、月のものは不純だった。ストレスだろうから、じきに周期も戻るだろうと思っていたんだけれど。もしかしたら……。
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