愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
私が逡巡し否定をしなかったせいか里乃子さんががばっと立ち上がった。

「私! 検査薬買ってきます!」

釣られたのか傑も勢いよく立ち上がる。

「待て、里乃子。俺が行ってくる」
「こういうものは女性の方が買いやすいでしょう?」
「それもそうだが」

完全に先走っている。私は慌てて、身体を起こしかけた。

「待って待って、ふたりとも。気が早いから……」
「いや」

私の制止の声を佑が遮った。

「咲花、悪い。気が早いかもしれないけれど、俺は知りたい……なるべく早く調べてほしい……」

佑は頬を紅潮させてそう言った。
佑は私に赤ちゃんができていたら嬉しいんだ。早く知りたいんだ。
そのことに胸がじんとした。

「行ってきます!」

里乃子さんが弾かれたように財布を手にマンションを飛び出していった。

「素早い……」

その背中を見送り、思わず呟く。

里乃子さんは本当にあっという間に戻ってきて、私は三人に注目される中、トイレで検査薬を試すことになってしまった。
立ちくらみも吐き気もおさまったので、大袈裟なことになってしまったなあと思いつつ、包装を破る。
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