愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「すごく不思議な感じだ。咲花が俺の子どもを産んでくれるなんて」

私は佑の腕に手を回しぎゅっと抱き締め返した。お腹の赤ちゃんの分も。
まだ小さな小さな命は、ママのこともパパのこともわからないかもしれないけれど、確かにここにいる。

「咲花、結婚しよう。正式に入籍しよう」
「佑」
「親に理解してもらうまで入籍しないでいようと思っていた。咲花の気持ちを汲んで、それでいいと思ってきた。だけど、産まれてくる子どものために夫婦になろう。これは何よりも優先することでいいと思う」

産まれてくる子どものために……。
ああ、そうだ。私たち自身じゃなくこの子のために選択するんだ。

「うん……うん、そうだね。そうしよう。私たちにとって一番優先しなきゃいけないことは、お腹にいるこの子のことになるんだね」

お互いではない、世界で一番大事な存在。
私たちは一緒にたったひとつのものを守っていく。
そのことが嬉しかった。

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