愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
8.守るから
六月中旬、咲花のお腹の中で赤ん坊は六カ月を迎えていた。
だいたいの予定日も出て、現時点では十一月の頭に産まれる予定だ。
咲花は健康そのもの。お腹の赤ん坊も順調に安定期に入った。
咲花は会社を退職した。両親が押しかけてきたこともあって、咲花が遠慮した格好だ。それに両親に妊娠のことは話したくないとも言っていた。赤ん坊を守るために咲花が過敏になるのは無理からぬことだろう。きっと、女性の本能に関わる問題なのだ。
咲花の元職場のMAコンサルタントは、咲花がまた働きたい時は契約社員で再登用してくれると約束してくれているそうだ。契約なら時短勤務がしやすく、いずれ子どもが大きくなったら正社員にと誘ってくれているのだからいい会社だと思う。いや、咲花の人徳もあるだろう。
「おかえりなさーい」
会社から帰宅すると、咲花が出迎えてくれる。少しだけ膨らんできたお腹が、ワンピースを着ていると目立つ。専業主婦業をはじめてから、咲花は穏やかで幸福そうに暮らしている。親からもたらされる不安感がなくなったからだろう。
「お夕飯、できてるよ。お魚煮つけたから」
「楽しみだ。はい、これ」
俺のお土産に咲花は困った顔をして見せる。
「も~佑、また買ってきちゃったの?」
俺の渡した包みを開け、中から黄色のロンパースを取り出し、咲花が苦笑いした。
「いいだろう、こういうの」
「もう、どんどんおもちゃや服ばかり増えていくわ。先に買っておきたいものは他にあるのに」