愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
暗闇の中身体を起こし、探すと庭園に面した縁側にぽつんと咲花が座っていた。
「咲花、どうした?眠れないのか?」
近づいてガラス戸を開け、背中に声をかけると、驚いて振り向く彼女。その目に涙が光っていた。何かあったのだろうか。
「体調が悪いのか?」
「ううん、違うの」
咲花はかぶりを振り、隣に座った俺を見つめる。
「少し怖い夢を見てしまって」
「……どんな夢?」
「全部夢だった夢」
どういうことだろう。咲花の顔を覗き込むと、赤い唇が薄く開いた。
「佑も私も婚約者がいなくなって、婚約することになって、佑が私のことを好きになってくれて赤ちゃんができて……。それが全部全部夢でしたって、そんな夢」
「夢オチの夢かぁ」
俺が笑うと、咲花も苦笑いした。その目からは新たな涙がぽろんと落ちた。
「ずっとずっと子どもの頃から佑が好きだったのよ」
「うん」
「幸せ過ぎて不安になっちゃったのねえ」
咲花は誰に言うとでもなく呟いた。
そうか、咲花は俺が想っている何倍もの時間、俺を見つめてくれていたのだ。
そして、叶わないと気持ちに蓋をしていた。
咲花の心がふと不安を感じてしまっても無理からぬことなのかもしれない。
「咲花おいで」
俺は咲花の肩を抱き寄せる。咲花はおとなしく頭を肩に預けてくれた。
「咲花、どうした?眠れないのか?」
近づいてガラス戸を開け、背中に声をかけると、驚いて振り向く彼女。その目に涙が光っていた。何かあったのだろうか。
「体調が悪いのか?」
「ううん、違うの」
咲花はかぶりを振り、隣に座った俺を見つめる。
「少し怖い夢を見てしまって」
「……どんな夢?」
「全部夢だった夢」
どういうことだろう。咲花の顔を覗き込むと、赤い唇が薄く開いた。
「佑も私も婚約者がいなくなって、婚約することになって、佑が私のことを好きになってくれて赤ちゃんができて……。それが全部全部夢でしたって、そんな夢」
「夢オチの夢かぁ」
俺が笑うと、咲花も苦笑いした。その目からは新たな涙がぽろんと落ちた。
「ずっとずっと子どもの頃から佑が好きだったのよ」
「うん」
「幸せ過ぎて不安になっちゃったのねえ」
咲花は誰に言うとでもなく呟いた。
そうか、咲花は俺が想っている何倍もの時間、俺を見つめてくれていたのだ。
そして、叶わないと気持ちに蓋をしていた。
咲花の心がふと不安を感じてしまっても無理からぬことなのかもしれない。
「咲花おいで」
俺は咲花の肩を抱き寄せる。咲花はおとなしく頭を肩に預けてくれた。