愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
9.大好きなあなたと



もう何時間苦しんでいるかわからない。今が痛みのピークなのかもわからない。
このまま死んでしまうんじゃないかしら。
そんなことを何度も思う。

「咲花」

名前を呼ぶ声が聞こえる。かすんだ視界に佑の顔が映る。
佑に助けてほしい。この苦しみから解放されるならなんでもするのに。

「咲花、頑張れ」
「うう」

頑張ってるけど苦しいのよ。いろんな声が全部遠い。意識はずっと変なところを漂っていて、自分が正気ではないのがわかる。
はい、いきんでーと言われ、残った力で必死に押し出そうとするけれど、身体が自分のものじゃないみたいでわけがわからない。

「うう、ううー」

上手上手、もう少しですからね。声が言うけれど、私には自力でどうにかできている感覚がないのだ。

「咲花、頭見えたぞ」

佑の声だけがはっきり聞こえる。

「咲花!」

佑が赤ちゃんを待ってる。私が産まなきゃ。


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