愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「咲花と花依を守るためなら、なんにでもなるよ」

佑が薄茶色の瞳で私を見つめてくる。この綺麗な瞳が花依に遺伝したのが嬉しいと思う。
私は目を細め、近づいてくる唇に自身の唇を重ねようと背伸びした。

「ふぎゅ、うぎゅ、ふああん」

私たちの前、花依がもぞもぞ動き、泣き声をあげた。

「あらら、もう起きちゃったのね」
「咲花、俺が抱いてあやしておくから。メイクと髪の毛だろ?」
「ありがとう。あ、さっきげっぷしないで寝ちゃったから、スーツに吐き戻しされないように気を付けてね」

キスをお預けにして私は準備を再開した。小さな手足を振り回す娘を、佑がよしよしとあやす姿を後目に洗面所に向かう。心は多幸感でいっぱいだ。

偶然に偶然が重なって私と佑は一緒になった。いまだにそう思うことがある。
だけど、私たちが育んだ愛情は、きっと最初の最初から私と佑の中にあったもの。

兄妹から夫婦へ、そしてパパとママへ。
関係が変わっていっても、ずっと佑といたい。
晴れた日も雨の日も、苦しいときも幸せなときも。ふたりでたくさんのことを乗り越えて噛みしめていきたい。
私は初恋を叶えたのだ。最高の形で。

「咲花!タオル取ってくれるか?」

佑の声がリビングから響く。私は少し笑って、タオルを手にリビングに引き返した。

「今、行くわ」




(了)



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2020.6.8 砂川雨路
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