愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
今日の婚約の食事会。振袖を着て美しく着飾った咲花は、笑顔を振りまき、明朗に会話を盛り上げていた。本当に子どもの頃から周りがよく見えている。

若く美しい咲花は、榛名の家が手を離せば、自由に誰とでも恋愛ができる。そして、彼女を望む男は多いだろう。
それなのに、家の事情で閉じこめてしまっている。申し訳ない。

ぐったりとしていた俺はスマホに連絡が来ていることに気づく。見れば、咲花からメッセージだ。

【今日はお疲れ様】
【また来週よろしくね】

咲花とて疲れただろう。
なにはともあれ、俺と咲花は婚約した。俺にできることは咲花を幸せにしてやることなのだ。苦労なく、平和な毎日が終生送れるよう、心を砕くことなのだ。
それについては、見知らぬ女でなくてよかった。子どもの頃から、妹同然で可愛がってきた咲花なら、いくらでも心を砕いてやりたい。

本当は、婚約者に逃げられるような俺ではなく、立派な男の下へ送りだしてやりたかった。
兄として、幸せな花道を用意してやりたかった。
俺なんかが相手で申し訳ない。

【お疲れ様】
【来週、土曜。また近くなったら連絡するよ】

同じような内容のメッセージを送り、スマホをテーブルに置いた。

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