愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「ホームドア故障だって。結構止まってたわ~。早く出たのに約束の時間過ぎちゃったね。ごめんなさい」
「だから車を出すと言ったのに」

今日の物件見学は事前に不動産業者に目星をつけてもらっていて、そこを数軒見て回る予定だった。

「このあたり、車を停めるところ少ないんだもの。それに、不動産屋さんも車を出してくれるんじゃない?」

咲花は俺を見上げ、屈託なく笑う。確かに都心部は駐車する場所が少ないけれど、そんなことまで気遣う咲花に感心してしまう。

「いいところが見つかるといいね」
「賃貸にするつもりだけど、いいか」
「問題ないよ」

いずれ子どもができたときに、住環境は考える機会を設ければいい。それまでは、互いに仕事もあるし、利便性の高い都心部に住むつもりだ。

しかし、子どもだなんだと咲花に言うつもりはない。いきなり言っても気が早いと混乱させるだろう。
何しろ、咲花だって俺を『親戚のお兄ちゃん』くらいにしか思っていないのだ。あまり意識させることを言って、咲花を不快にさせたくはないのだ。

不動産業者の担当に連れられてやってきたのは六本木のタワーマンションだ。ここなら、咲花の職場にも遠くない。

「すごい景色ね」

咲花ははあーとため息をつき、30階からの景色を眺めている。眺望が良い方がいいだろうと、不動産業者への指定条件に入れてある。
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