愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「陸斗が建てたマンションのひとつだけど、新しい方だよ。新築の方がいいか?」
「新築じゃなくていいわよ。内装も豪華……セレブって感じ」
「こんなものだろう。少し狭いかもしれないが」

咲花は窓から室内を見回し、ぼそりと言う。

「狭くはないかもだけど……お家賃が高そうかなあって」
「家賃?」
「家賃。月々、結構するんじゃない?」

そんなことは気にしなくていいのに。曲がりなりにも陸斗建設の後継者だ。それなりの給与はもらっているし、すでに資産もある。
しかし、しっかりものの咲花には気になるのだろう。
担当者が月額の賃料を口にし、にっこりと笑った。

「マンション全体は分譲ですが、オーナーさんがこの部屋を賃貸にしているのでリーズナブルですよ」
「そうなんですね」

相槌を打ちながら、咲花は微妙な表情をしている。

「近くにスーパーはありますか?」
「ええと」

担当者がタブレットで地図を出している間に咲花の横顔を見れば、やはり咲花はこのマンションが気に入っていないのを感じる。伊達に子どもの頃から一緒にいない。

「何軒か見て回る。咲花の気に入るものがあればいいけど。何も今日決めなくてもいいしな」
「うん、そうね」

俺を見てにっこり微笑む咲花だが、結局この後、一度不動産会社に赴き、咲花の希望条件でマンションを選定し直した。咲花は「佑が選んでくれたマンションを見て回ろうと」言ったのだが、咲花の意見を尊重した方がいいと思った俺が決めた。
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