愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
結果、賃料は多少抑え、利便性は高く、一応双方の実家から近く治安も悪くない地域にマンションを借りることとなった。
都心部だが山の手線の外側に出た分、賃料も物価も下がった形だ。
セキュリティの部分だけしっかりしたかったので、俺が主張したのはその点だけだ。

「なんかごめんね。佑が色々探しておいてくれたのに」

咲花は申し訳なさそうに言う。
マンションの契約まで済ませると日はとっぷりと暮れていた。予約せずとも入れるという理由でスペインバルで夕食にする。

「いや、いいんだ。俺は条件を言って、担当に探してもらっただけだから。それに、咲花の条件を聞くのを忘れていた。ごめんな」
「豪華なタワマンなんて気おくれしちゃうのよ。って言っても、今日決めたお部屋も私からしたらすごく贅沢だわ」
「セキュリティには代えられないから、そこは納得してくれよ」

賃料などは、俺を気遣っているのだと思う。生活に必要なものはすべて、俺の方で出すと言ってあるからだ。それは結婚までの諸費用と、ふたりの生活の面で必要な金額をという意味だ。
そこそこの資金はあるから気にしなくていい。できれば、咲花には何も気にせず、好きなように好きなものを買ってほしい。
しかし、そういうことを喜ばない女であることも俺はわかっている。

「それぞれ実家に合鍵を渡しておいた方がいいわよね」
「突然尋ねてくることはなさそうだけど、一応な」

双方の両親に気を遣って、訪れやすい立地を選ぶあたりもさすがだ。合鍵の気遣いも、咲花らしい。
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