愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「生活必需品を揃えられる店が近くにあるのは大きいね」
「スーパーやドラッグストアは生活する上で大事なポイントだった。気が付かなくて悪い」
「ううん、いいところに決まってよかった。通勤が楽になったかなあ」
咲花は新居選びを自分の我儘を通したと思っているのかもしれない。咲花が住みやすく思ってくれるのが一番だ。
咲花は穏やかで年の割には落ち着いた女子だったが、芯の強さみたいなものはずっと感じていた。子どもの頃、傑と言い合いになり絶対に折れなかったことを思いだす。主張ははっきりしている。
そう言えば中学生の時、三人で猫を拾ったことがあった。老猫で、白内障の目は見えておらず、病気なのか栄養失調なのかガリガリに痩せていた。咲花は両親の反対を押し切って、絶対に自分が面倒を見るとその猫を引き取った。
貯めたお年玉や小遣いで通院し、回復した雌の老猫はそこから三年、咲花の家で穏やかな余生を送ることができた。あの時、俺たちや両親に『絶対に面倒を見る』と睨みつけるような形相で啖呵を切った咲花をよく覚えている。
「は~、お腹空いたね」
咲花はモヒートをごくごくと飲み、串についた肉をもぐもぐとほおばっている。見た目は上品なお嬢さんにしか見えないのに、いつも食いっぷりはいい。
「佑、これ美味しいよ。私ばっかり食べてる。食べて食べて」
「ああ、食べる」
こうして一緒にいると、まだ婚約者同士という感じはしない。長く一緒に過ごしてきた妹。愛らしくしっかり者の妹。
彼女は幸せにしてやらなければならない。傑ができなかった分も。
しかし、やはり考えてしまう。
婚約者に逃げられるような俺に、果たして咲花を幸せにできるのだろうか。
それとも、咲花もそこまでは望んでいないだろうか。家のため、仕方なくこの結婚に応じただけだろうか。
「スーパーやドラッグストアは生活する上で大事なポイントだった。気が付かなくて悪い」
「ううん、いいところに決まってよかった。通勤が楽になったかなあ」
咲花は新居選びを自分の我儘を通したと思っているのかもしれない。咲花が住みやすく思ってくれるのが一番だ。
咲花は穏やかで年の割には落ち着いた女子だったが、芯の強さみたいなものはずっと感じていた。子どもの頃、傑と言い合いになり絶対に折れなかったことを思いだす。主張ははっきりしている。
そう言えば中学生の時、三人で猫を拾ったことがあった。老猫で、白内障の目は見えておらず、病気なのか栄養失調なのかガリガリに痩せていた。咲花は両親の反対を押し切って、絶対に自分が面倒を見るとその猫を引き取った。
貯めたお年玉や小遣いで通院し、回復した雌の老猫はそこから三年、咲花の家で穏やかな余生を送ることができた。あの時、俺たちや両親に『絶対に面倒を見る』と睨みつけるような形相で啖呵を切った咲花をよく覚えている。
「は~、お腹空いたね」
咲花はモヒートをごくごくと飲み、串についた肉をもぐもぐとほおばっている。見た目は上品なお嬢さんにしか見えないのに、いつも食いっぷりはいい。
「佑、これ美味しいよ。私ばっかり食べてる。食べて食べて」
「ああ、食べる」
こうして一緒にいると、まだ婚約者同士という感じはしない。長く一緒に過ごしてきた妹。愛らしくしっかり者の妹。
彼女は幸せにしてやらなければならない。傑ができなかった分も。
しかし、やはり考えてしまう。
婚約者に逃げられるような俺に、果たして咲花を幸せにできるのだろうか。
それとも、咲花もそこまでは望んでいないだろうか。家のため、仕方なくこの結婚に応じただけだろうか。