愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

「お母さん、傑との婚約破棄は私も理解してのことだから。迷惑をかけたことは謝るけれど、傑を責めるのはやめて」

それから、父を見る。

「お父さん、竜造おじさまは私でいいとおっしゃってるの？」
「ああ、竜造は咲花をぜひにと言っている。佑くんとは互いに気心も知れていていいだろうと」
「傑くんだって気心の知れた相手でしたよ」

母がまだ不満げに口を挟む。母からしたら、私が蔑ろにされ、たらいまわしにされているように映るのだろう。
父は私の人情に訴えるつもりらしく、じっと見つめて尋ねてくる。

「佑くんのことは咲花も信頼しているだろう。子どもの頃から兄妹同然の間柄だ。夫としてはどうだ？傑くんとの間に遺恨がないというなら、佑くんと一緒になっても嫌な気持ちにはならないだろう？」
「あぶれ者同士一緒にくっつけちゃえ……って感じにも見えなくはないね」

皮肉を言ったつもりではないけれど、なんとなく自嘲的になってしまった。母が横から言い募る。

「咲花が嫌ならお断りする話よ」
「こら、母さん。咲花、榛名の家と陸斗建設のためにも考えてはくれないか。佑くんは陸斗の後継者。今は若くして副社長の役職についている。おまえの一生は安泰だ。どうだろう、佑くんと結婚するのは」