愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
確かに傑の言い分はわかる気がする。責任感と同時に、佑は婚約者に失踪されてしまった傷みたいなものがあるのかもしれない。婚約者との間に、恋愛感情が介在していれば余計に。

「そう、私と傑の婚約破棄もね、いまだに合意だって理解してないみたいなのよ」

少し前、傑と里乃子さんが歩いているところを佑と二人で目撃した。その時も、佑は私が傷ついているんじゃないかと考え、結婚はやめてもいいと言いだしたのだ。当然、私は焦って、むしろ佑と結婚できなかったら困ると説得しなければならなかった。

「そういうところも堅物だからな。咲花が我慢していると勘違いしてるんじゃないか?」
「お兄さんは堅い方なんですか?」

里乃子さんが傑を見あげて尋ね、傑はうんうんと頷く。

「ああ、ザ・長男って感じだな。融通が利かなくて、責任感と男らしさで出来ている」
「傑よりコミュニケーション能力は高いけどね」

私が突っ込むと、傑がう、と詰まった。

「あと、佑の方が格好いい」

どうせなら惚気てやろう。だって、佑本人はいないし、恋心を吐露する場所が他にないんだもの。

「惚れた欲目……と言いたいけど、確かに兄貴の方が背も高いし、顔もいい。どこからどう見てもイケメンっていうのは兄貴のことだな」

ブラコンなところのある傑は素直に認める。里乃子さんが横で一生懸命にフォローする。

「お兄さんがどんなイケメンでも、私が世界一格好いいと思うのは傑さんです!」

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