愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「おお、家具が入ると家って感じだな」
「本当に何もチェックしなかったのね」

室内をきょろきょろと点検していた佑が、寝室を覗き、ぎくりと動きを止めた。
ん?なんだろう。

「……咲花」
「なに?」

並んで寝室を覗き込むと、佑が驚いた顔でベッドを指差している。

「ダブルベッド……の予定じゃなかったよな」
「え!?」

私は驚いて声をあげた。佑が決めたんじゃなかったの?

「確かに私もシングルベッドにしたつもりだったけど、引っ越して来たらこれしかなかったから、佑が変えたのかと……」
「いや!俺は、そういうつもりは!だって、おまえ、困るだろう!?」

困る。確かに困る。
佑とふたりで眠るなんて、心臓が爆発しちゃいそうだ。

「ちょっと、確認する。悪い。俺が間違えたのか、業者が間違えたのか」

佑はリビングに戻り、ソファに荷物を置くとスマホを取り出す。

「今から交換してもらえるなら、すぐに来てもらおう」
「え?でも私、一晩寝ちゃってるよ」
「中古扱いになるかもしれないが、このままじゃまずいだろう」

まずいといえばそうなんだけど、まずくないといえばまずくない。
夫婦としてはこれもアリでしょう。

佑は私を気遣ってるのかもしれないけれど、そんな言い方しないで。私たち、夫婦になるために同棲を始めたんだから。

「このままでいいと思う!」

思いのほか、はっきりと言葉になった。
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