愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「咲花、俺変なこと言ったか?」

真面目に尋ねてくるので大慌てで首をぶんぶん振った。

「佑って案外細かいところに気づいてくれるんだなあって感心してたの!」
「まあな。傑よりは朴念仁じゃないつもりだ」

そこで私たちはお互いに笑った。
いい機会かもしれない。私はまだ赤い頬のまま、佑を見つめる。

「あのね、一応言っておくんだけど。昨日、傑と彼女さんと会ってきたの」

佑が驚いた顔になる。

「私ね、傑のことはずっと弟みたいに思ってきたから、最初に好きな人ができたって聞いたとき、まずはもう応援しなきゃって思った。それで婚約を解消したのよ」
「咲花、それは」
「私が身を引いたとか、まだ傑が好きなんじゃとか、そういう誤解はしないでね。最初から、傑のことは恋愛対象じゃないから。私たち、交際関係ですらなかったのよ。ぶっちゃけ、キスもハグもしたことないの」

私の好意は口にせず、大事な要点だけ伝えたつもり。そして、ここから先はあまり言いたくないけど伝えておかなきゃ。

「あのね、だから佑が責任を感じる必要はないの。傑の代わりに幸せにしてやらなきゃとか、思わないでね」

佑がわかりやすく口元を押さえ黙った。
うん、手に取るようにわかるけど、そう思ってたのね。

「……わかった」

少し間があって、佑は頷いた。

「なんだか、あらゆる方向で気を遣わせてすまん」
「いいえ~」

よかった。少しは理解してもらえたかな。
やっぱり、私が告白する理由はないよね。これで万事OKだよね。

「ちょっと待っててくれるか」
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