愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
佑がリビングを出て行く。すぐに戻ってきて、私の手に押し付けるように小箱を渡した。

「これなあに?」
「本当はもっと早く渡すべきだった」

開けてみると、そこには大振りのダイヤモンドのついたリングが入っていた。

「これって、婚約指輪!?」

思わず大声を出してしまった。佑が照れているのか仏頂面で頷く。

「形にこだわるつもりはないけれど、結婚の約束だからな。受け取ってほしい」
「あ、ああ、ありがとう」

もごもごと御礼を言いつつ、目の前がクラクラする。ああ、もう今日は心臓に悪い日だ。
心臓に悪いついでにもうひとつサービスしてもらおう。
私は壮絶に照れながら、必死に平静を装い、左手をぶんとつきだした。

「佑、つけて」

佑の方が目に見えて照れている。それでも、リングを手に私の左手の薬指にはめてくれた。

「綺麗。ありがとう、佑」

本当はちょっと泣きそう。感極まって号泣しちゃいそう。パニックで叫んだりしちゃいそう。
だけど、そんなことできないから、私は唇をもぞもぞさせてにっこり笑って見せるのだ。

「サイズ、よくわかったねえ」
「咲花のお母さんにはかっておいてもらった」

あら、裏でそんなやりとりが。母が途中から何も言わなくなったのは、佑が結婚に向けて真剣に動いてるって知ったからかな。元から、母は佑のことは信頼しているはずだし。

「結婚指輪はふたりで選びに行こうね」
「ああ、そうしよう」

サプライズの婚約指輪。私の指にはめてくれた佑。嬉しい。幸せ。正直、今の私にはこの幸せが最大限に感じられる。これ以上はいらないよ。
私は夕食の準備を再開するために、婚約指輪を大事にケースにしまった。宝物ができてしまった。
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