愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
夕食はつつがなく済んだ。
子どもの頃から気心の知れた佑だ。恋心を隠すのに長けた私は、何も意識せずに会話できるので、食卓は家族のような温かさだった。
なにより、私は幸せでふわふわしていた。大好きな佑から婚約指輪をもらってしまったのだもの。
そして今夜はダブルベッドで眠るのだ。

夕食の片付けをし、シャワーを浴び、どきどきとその瞬間を考える。
何も起こらない。大丈夫、何も起こらない。
自分に言い聞かせながらも、万が一のことを考える。

佑はきっと、女性と関係を持ったことがあるはず。傑は何も教えてくれなかったけれど、十代の頃は彼女がいたのを知っている。元婚約者の女性とだって身体の関係があってもおかしくない。
私は処女だ。彼氏は中学生以来いない。

もし、佑が求めてきたらどうしよう。夫婦なんだし、とダブルベッドを薦めた私だ。断ることはできない。
求められたら嬉しいのは間違いない。だけど、まだ佑とそういうことをする想像ができない。未経験過ぎて見当がつかないのだ。

部屋着に着替えて、リビングに戻ると、佑が立ち上がった。

「先に休むけど、咲花」
「は、はい!」

なんと言われるだろうと身構えていると佑は真剣な瞳で私を射貫いて言った。

「ベッドはどっち側で寝たい?」
「え?」
「好みがあるだろ」
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