愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「咲花、それはなんだ」

仕事から帰ってきた佑が、リビングで荷ほどきしている私に声をかける。私は梱包を解いて見せた。

「お布団よ」

シングルサイズの掛布団と綿毛布を別途新調したのだ。現在、クイーンサイズ用の羽毛布団がベッドにはあるけれど、あれって相当くっついて寝ないとはみ出てしまう。要は端と端で寝ていたら、片方が寝がえりを打った瞬間に布団を持っていくことになるのだ。ダブルベッドで実際に寝てみるまで知らなかった問題だ。世のダブルベッド使用者たちは布団を奪い合わないために、くっついて眠るものなのね。
だけど、私と佑にはまだそれは無理。寒くなってきたし、私用に掛布団がいるなあと購入したのだ。

「お布団、取り合いにならないようにね。私の分。これでもっと寒くなっても大丈夫」

ちょっと張り込んだシングルの羽毛布団をぱふぱふと叩いてみせると、佑が微妙な顔をしていることに気づいた。

「……そんなことを気にしていたのか?」

あれ?なんか不機嫌?

「私、寝相悪いから。佑に寒い想いをさせないようにって思ったんだけど……」
「咲花は端で寝すぎなんだと思う」

どきりとする。いや、だって佑だってかなり端で寝てるじゃない。私たち、布団を端と端で引っ張り合ってる状況じゃない。
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