愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
掴まれ引き寄せられている右肩が熱い。顔と顔がびっくりするくらい近いよ。まるでこれから抱き合う恋人同士みたい。

「あ」

私の顔の赤さと戸惑った表情に、佑がぴたりと動きを止めた。どうやら、かなり密着していることに気づいた様子だ。
次の瞬間、佑は私からそっと手をはずし、自分のスペースに戻った。今度は佑の方がかなり端っこに寄っている。

「佑、そんな端っこにいかないで」
「……悪かった。急に触って」
「そういうの気にしないってば」

佑は背中を向け、サイドボードのリモコンで室内灯を常夜灯の暗さにする。そのままベッドの隅で横になるので、こうなると私も恥ずかしいのなんのと言っていられない。
佑の部屋着であるトレーナーのすそをぐいぐい引っ張る。

「ほら、お互い真ん中で遠慮せずに眠るんじゃなかったの?」
「咲花に遠慮されたくなかっただけだ。俺のことは構わなくていい」
「構うよ、気になるもの」

これじゃ昨日までと一緒だ。せっかく距離を縮めて眠ることになったのに。そりゃ、私も覚悟ができたわけじゃないけど、佑が端にいるなんて駄目。

「もう、佑!言うこと聞きなさい」

トレーナーの裾も、肩も引っ張ると、根負けしたのか佑がくるりとこっちを向いた。
たぶん、気まずいのだろう。眉をひそめている。
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