愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「咲花、嫌だったら言えよ」
「嫌じゃないから言ってるの。私と佑の仲でしょ」

そう言うと、佑は少し安心したような顔をした。兄と妹という関係性は私たちが近づくのにちょうどいい。並んで横になると、佑の腕と私の腕がぶつかった。
さっきまでのドキドキは確かにある。だけど、懐かしさと嬉しいような気持ちがこみあげてきた。

「えい」

私は思い切って、つま先を佑の脛に当てた。身長差があるので、佑のつま先は布団にもぐらないと届かないのだ。スウェットから出た脛に私の足が当たり、佑が声をあげる。

「びっくりした。咲花、いまだに冷え性か。すごく冷たいぞ」
「へへ。そうなの、少しあっためてもらおうかな。昔みたいに」
「まあ、俺は体温高い方だから、おまえの足くらいならいいけど」

子どもの頃を思い出す。まだいきなり夫婦のようにっていうのは無理だ。でも、こんな関係もいいんじゃないかな。

いつか、本当にいつか、佑が私のことを好きになってくれたら嬉しい。
こうして眠ることにお互いなんの違和感も覚えずにいられるようになれば。

足同士をくっつけているうち、身体がほかほかしてきた。思ったよりすんなりと眠りは訪れた。
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