愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

【今まだ日比谷か？】
【会社に来られるか？席次を親父に渡す。それと、昼飯を食べよう】

竜造おじさまに席次確認をしてもらえるならちょうどいい。会場問題も伝えてもらおう。
間もなくお昼の時間だし、佑とランチというのは嬉しい誘いだ。
電車に乗るのをやめ、陸斗建設のある虎の門まで散歩がてら歩くことにした。

陸斗建設は都心のど真ん中に大きなビルを構えている。外観は知っていたけれど、中に入るのは初めてだ。
広々としたエントランスは採光の取れる作りになっていて、近代的なデザイン。さすが建設会社。
受付に話が行っていたようで、名前を名乗るとすぐに応接室に案内された。エレベーターで30階まで上がってから綺麗で広い部屋に通される。
スマホには佑からメッセージが入っている。

【悪い。少し遅くなりそうだ。待っていてくれ】

私は暇だから全然いいんだけどね。出してもらったコーヒーにポーションミルクを三つ入れくるくる掻き混ぜる。景色もいいわ、この応接室。今更だけど、佑はこんな大きな会社の社長になっちゃうんだ。

一応、私もこの陸斗グループの人間。父は傘下企業の社長だ。
だけど、感覚としてはお嬢さんではなくて、一庶民として生きてきた。榛名家みたいな豪邸に住んでいるわけでもないし、お手伝いさんがいるわけでもない。
父は忙しくて、家族で派手に海外旅行とかセレブなショッピングや外食ということもなかった。海外なんて高校の修学旅行と大学の卒業旅行しか行ったことのないお嬢さんよ。

だから、オフィスビルを見ただけで、佑の抱えるものの大きさにちょっと圧倒されてる。