愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
実家が引越し、私が女子校に進学したため、高校時代はあまり榛名兄弟とは接点はなくなった。もちろん親戚であり、親同士はよく会っているので、顔を合わせる機会は年に何度もある。彼らとは幼馴染程度の関係を維持した。その方が私はラクだった。

たまに見かける佑がどんどん男らしく格好よくなっていくのを間近で見るのはつらかった。
封印した恋はいつ暴れ出すかわからない。大事なことは離れること。

それぞれが大学に進み、佑は陸斗建設へ入社、傑は両親の反対を押し切り、まったく関係ない広告代理店に入社し、家を出てしまった。
私は経営コンサルティングの大手・MAコンサルタントに入社した。コンサル業務ではなく、総務部受付係として。
傑とは互いの会社が近いのでたまに会った。しかし、私も傑も『本当にこいつと結婚するの?』という違和感を内側に抱え続けていたように思う。
私と傑はどこまで行っても姉弟だった。姉弟として互いが大事であることには変わりないけれど、それは恋愛感情には育たない種類のものだった。

転機が訪れたのは昨年だ。ある日、食事をしながら傑が言った。

『咲花、婚約を解消できないだろうか』

私たちは26歳で、双方の両親がそろそろ結納だけでもと言いだしたタイミングだった。
このタイミングで婚約破棄?
傑の見たこともないような真剣な表情に、私は反射的に頷いた。

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