愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました



弟の傑が食事に誘ってきたのは、美里の一件から二日後のことだった。
あらためて恋人を紹介したいと言う。

『兄貴には会ってもらいたい』

両親とはソリが合わない傑だが、俺とは成人しても良好な関係を築いてきた。しかし、咲花との婚約破棄があって以来、心情的にはどうしても傑を責めたいような気持ちがあるのは確かだ。両親と仲介したのは俺だし、咲花本人も合意の上だったと言ってもだ。

咲花は先日、傑の恋人を紹介してもらったと言っていた。咲花は聡明なので、傑の恋人を貶めるような物言いはしなかったけれど、俺は点が辛くなってしまいそうだ。
咲花には仕事で遅くなると告げ、傑との待ち合わせに向かった。

指定された中華料理店で、傑と恋人は待っていた。

「初めまして!行永里乃子と申します!」

元気よく、いや勢いだけが空回りしていそうな声で、彼女は頭を下げた。

「初めまして。傑の兄の佑です」

俺も頭を下げ、三人で円卓を囲むことになった。
以前は遠目で見ただけだったけれど、まじまじと見れば、やはり彼女はすごく若い。
二十代前半だろうか、幼い顔立ちだ。目は大きく、柔らかそうな髪は、マロンブラウンだ。清楚なオフィスカジュアルと派手派手しさのないメイクも好感は持てる。
広告代理店の営業というからにはガツガツした雰囲気のキャリアウーマンタイプなのかと思いきや、元気いっぱいの小学生女子を連想させるような女性だ。
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