愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「兄貴と咲花の結納も結婚式も、俺は参加しないだろう。だけど、どうしても正式にお祝いをしたいから、今度席を用意させてほしい。咲花にはなんとなく話してあるんだ」

確かに傑は結納には不参加だ。しかし、改めて祝いだなんて、大人になったなとなぜか感慨深く思った。

「俺も異存ないよ。ありがとう」

料理が出そろい、俺たちはビールで乾杯した。

「とりわけますね」

早速気を利かせる彼女は、恋人というか部活の後輩みたいだ。

「佑さん、お嫌いなものはありませんか?」
「ありがとう。里乃子さん、気を遣わないでください」
「兄貴はなんでも食べられるから、どんどん盛ってやってくれ」
「はい!」

里乃子女史は俺の分をとりわけ、傑の皿にはきちんと苦手なしいたけを避けて盛り付けている。ふと、傑の目に気づく。彼女の一挙手一投足をじっと見つめる視線の熱量。
俺は弟のこんな顔を見たことがない。
そして、同じような視線を彼女も傑に向けているのだ。目を細め、うっとりという言葉が似合う表情をしている。

俺の心配は杞憂なのかもしれない。
傑が彼女に惚れこんでいるのは間違いなく、彼女もまた傑に対して愛のこもった視線を向けている。演技でこんなことができるタイプの女性ではなさそうだ。

咲花と比べて彼女が劣っているように見えていたけれど、こうして、弟に愛情深い態度を取る姿を見ると、不思議と咲花と同じくらい美しく愛らしい女性に見えた。

……しかし、俺は何かにつけて咲花を基準にしてしまうみたいだ。
仕方ないな。咲花は、完璧に近い女なのだから。
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