愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました



年末のMAコンサルタントのオフィスは慌ただしい。
私自身は受付業務がメインとはいえ、他にも総務の仕事は多くある。今日は午前中受付に立ち、時間をずらして食事を摂り午後は総務部オフィス内で仕事している。

「不破さん」

課長に声をかけられ、降り返る。課長は社員データを精査していたはずだけど。

「ごめんね、事務的な話で聞くんだけど、御苗字が変わるのっていつのタイミングになるんだっけ」

私に婚約者がいることは特に職場では話してこなかった。しかし佑と婚約し、住所変更を余儀なくされたこと、また結婚式の招待状を渡す関係で報告することとなった。本当は職場の人は招かずに済ませたかったんだけれど、新婦側の列席者が少ないとつり合いが取れないと言われてしまったのだ。

「来春の結婚式の前後になると思います」
「そうかそうか、ありがとうね。結婚式の準備、大変でしょう」
「ええ、そうですね。決めることが多くて」

規模が小さいとは言えない結婚式だ。引き出物、料理、会場のお花、そういったところまで気を遣う。双方の両親からの要望も多いし。

「お式の後、一週間ハネムーンだったよね」
「はい。お休みをいただく予定です」
「不破さんは、有休溜め込んじゃう方だから、そういう時は思い切って使ってね」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」

周囲の人が私の結婚の話をすると、いよいよなんだなという感覚になる。恋愛と違い、結婚は対外的に家族になると表明する儀式でもあるのだ。自分たちの関係を公のものにするというのか。
家同士の繋がりが主軸になるのも無理からぬことなのかもしれない。昔の日本の婚姻はそうだったわけだし。
だから、どこかで主役の私と佑が置き去りにされているような感覚はあるけれど、口には出さない。
別にいいんだ。結婚式は結婚式。イベントと割り切ればいい。
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