愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
佑はしばし黙り、それから私と同じカシミヤのマフラーを手に取った。紺色のものだ。レディースの売り場にあるとはいえ、このシンプルなマフラーはユニセックスな商品みたいだ。

「それなら、俺はこれがいい」
「ええ?そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「いいんだ。咲花とお揃いだし」

にっこり爽やかに言う佑。お揃いって、そういう可愛いこと言わないで。佑とお揃いなんだって思った瞬間から意識してしまう。

「じゃあ、お揃いにしちゃおうか」
「ああ」
「私たち、すごく仲良しみたいだね」

照れ隠しに茶化そうとしたら、佑が私の耳元に唇を寄せてささやいた。

「仲良しだろ?」

私はぶわっと顔が熱くなるのを感じた。
ずるい、今の反則だわ。好きな人に耳元でささやかれてどきっとしない女はいないと思う。私は火照る頬のまま、ぷいとそっぽを向いた。
きっと、佑は私をドキドキさせようなんて思っちゃいない。言うのが恥ずかしい言葉だから、私にだけ聞こえる声で言っただけ。それなのに、ぐらぐら心を揺さぶられている私がいる。

「お、お腹空いちゃった」
「プレゼント用に包んでもらうから待ってくれよ」

私たちはお揃いのマフラーをそれぞれ包んでもらい、それから夕食を食べに出かけた。

昼間のことを思いだす。結婚式はどうやっても親たちのイベントになってしまう。
だけど、私と佑は幸せだからいいか。私たちは私たちのペースで楽しく夫婦になって行こうとしているんだもの。
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