愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
料理をしながら、新婚の思い出深いクリスマスイブを想像して頬が緩む。
ふわふわと幸せに浸っていたせいだ。サラダのドレッシングを混ぜる手が、つるんと滑った。

「あ、ああ~!やっちゃった~!」

言い訳するなら、オイルを使っていたから。ドレッシングのボウルは勢いよく手から飛び出し、ひっくり返る。私の胸からお腹にかけてがびっしょりだ。あたりに広がるハーブとビネガーのいい香り。

「うわ~、大変!」

慌ててセーターを脱ぎ、お風呂場に持っていく。上半身はタンクトップ姿のまま、キッチンに飛び散ったドレッシングを拭きとった。
ああ、ドレッシング臭がキッチンのみならずリビングまで充満しちゃった。いや、セーターを置いてきたバスルームまで匂っているに違いない。
ドレッシングは市販のものでごまかすとして。ともかく他の料理に被害がいかなくてよかった。ローストビーフにかかったり、ラザニヤをひっくり返したりしなくて幸いだったと考えなきゃ。

拭き掃除は終えたものの、ドレッシングの匂いは強烈に残っている。あ、私の肌にも飛んでいるんだわ。ドレッシングまみれの哀れなセーターの救出も兼ねて、シャワーを先に浴びてくることにした。
ラザニヤはオーブンへ入れ、サラダとローストビーフはキッチンにセット。たぶん、あと一時間くらいで佑が帰ってくると思う。大丈夫、間に合う間に合う。

シャワーを浴びていつものボディソープで身体を洗った。さらにセーターをお湯にひたす。せっかく可愛いセーターを着てたのになあ。身体も髪も洗いドレッシング臭さは取れたはずだ。
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