突然ですが、エリート御曹司様の花嫁を演じることになりました
突然ですが、花嫁を演じることになりました。
都内にあるとあるチャペル。今から行われるのは……友人である詩(うた)の結婚式のはずだった。
「君はニコニコしていてくれればいいから」
「……はい、わかってます」
私、七瀬一花(ななせ いちか)。数分前までは参列者だったはず。だが今の私は、ウェディングドレスを着ている誰から見ても花嫁になっている。
事の発端は、今から一時間前のことだった。
私は参列者として式場に行き、詩に挨拶しに花嫁の控え室を目指し歩いていると周りは騒ついていた。「なんかトラブルでも起きたのかな」なんて軽い気持ちで控え室の扉をノックした。
「……詩っ、あ……七瀬さん」
中にいたのは詩のお相手である天海律(あまみ りつ)さん。天海グループの次期社長だ。
「詩が、結婚できないって……置き手紙残して失踪した。」
「え……詩が?」
彼女が失踪だなんて、そんな……私はすごく驚いた。だって、先週に彼女に会ったのだ。
その時、散々天海さんへの惚気話を聞いたばかり。そんな詩がいなくなったなんて信じられない。
しかし、私以上に動揺しているのは天海さんだ。式当日に花嫁に逃げられたーー天海グループの次期社長の彼が一番驚き、ショックを受けているに違いない。
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