ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変
※※※
ーーその日の夕食後。
リビングのソファで寛いでいた私は、すぐ隣に座っているお兄ちゃんをチラリと見て口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんて……、どんな女の子が好きなの?」
「……は?」
その唐突な質問に、怪訝そうな顔を見せるお兄ちゃん。
「なんで?」
「えっ!? ……べ、別に!? 何となく……、気になっただけ」
「……へー」
慌てた私を怪しく思ったのか、目を細めてチラリと流し見るお兄ちゃん。
(うっ……。明らかに怪しまれている。どっ……ど、どうしよう……)
いきなり、ピンチに追い込まれてしまった。
(……あっ!)
「そっ……、そういえばっ! イヴの日、お兄ちゃん何処に行ってたの!?」
前から気になっていた事を質問してみると、何とかその場を誤魔化そうとしてみる。
「……何処だっていいだろ」
「良くないよっ! 私にはデート禁止したくせにっ !」
「結局、俺に黙ってデートしてただろ」
ギロリと睨まれ、何も反論できない……。
(はい、仰る通りです……。あの時のお兄ちゃんは、猛烈に恐ろしかったのを……今でもハッキリ、覚えています)
それを思い出した私は、口元をピクリと痙攣らせると、お兄ちゃんの視線に耐えかねて顔を背ける。
(私はただ……っ。彩奈の為に、お兄ちゃんの好みを聞き出そうとしただけなのに……)
気付いたら、お兄ちゃんにお説教されているみたいな状況になってしまった。
(一体、何故……?)
これでは、とても彩奈に協力なんてできそうにない。自分の不甲斐なさにキュッと唇を噛んで俯く。
すると、そんな私を見たお兄ちゃんが小さく溜息を吐いた。
「……別に、誰かとデートしてたとかじゃないから」
(……えっ?)
お兄ちゃんのその言葉に、勢いよく顔を上げると隣に視線を向けてみる。
テレビ画面を見つめながら、それでも私に向けて語り続けるお兄ちゃん。
「クラスの奴らに、呼び出されただけ。でも、思い出したくないから話したくなかったんだよ」
「そう、なんだ……」
あの日を思い出しているのか、ウンザリとしたように大きく溜息を吐いたお兄ちゃん。
(一体、何があったんだろう……)
気にはなるものの、隣で疲れきった様な顔を見せているお兄ちゃんを見て、何だか気の毒になってくる。
当初の目的であった、好みのタイプはまだ聞き出せてはいないものの、イヴに誰かとデートしていた訳ではないと知ってホッとする。
「お兄ちゃんて……。今、彼女いないの?」
これだけは、念の為に確認しておかないといけない。
彩奈がお兄ちゃんからフリーだと聞いたのは、どうやら秋頃の話しらしい。
(もしかしたら……。今は、彼女がいるかもしれないし)
そんな不安があった私は、コクリと小さく唾を飲み込むとお兄ちゃんの返事を待った。
「夏頃から、ずっといないよ」
「……! そうなんだっ! 良かったね!」
お兄ちゃんの言葉に、思わずパッと笑顔を咲かせる。
(っ……良かったね、彩奈っ! お兄ちゃん、彼女いないってよ!)
嬉しそうにニコニコと微笑む私を見て、不審そうに目を細めたお兄ちゃん。
「何が、良かったんだよ?」
「……ぅえっ!? あっ、いやー……。だって、大変でしょ? 彼女がいると……、色々とっ!」
思わずお兄ちゃんの前で『良かった』なんて本音を零してしまった私は、アハハと笑ってなんとかその場を誤魔化してみる。
「彼女がいなくたって、毎日大変だよ……」
そう言って、小さく溜息を吐いたお兄ちゃん。
(……?)
「花音の面倒を見るので手一杯なんだよ、俺は。……彼女なんて、作ってる暇ないだろ」
「……えっ!?」
(わっ……、私っ!? 私のせいで、お兄ちゃんは彼女を作らないの!? そ、それじゃあ……彩奈は? 彩奈の気持ちは……、どうなるの?)
お兄ちゃんの言葉に、ショックで固まってしまった私。
(まさか……。協力するどころか、私が彩奈の邪魔になっちゃうなんて……っ)
応援するなんて言っておきながら、まさか自分が足を引っ張る事になるとは思ってもいなかった。
お兄ちゃんに告白すると言っていた時の、照れながらも幸せそうに微笑んでいた彩奈。そんな姿が、脳裏に思い浮かぶ。
(私は……。そんな彩奈の足を……っ、引っ張ってしまうの? そんなの……、絶対に嫌っ!)
そう思った私は、もの凄い勢いでお兄ちゃんの腕にしがみ付くと、お兄ちゃんの服をギュッと掴んで口を開いた。
「……そんなの嫌っ!! 絶対にダメッッ!!」
突然の大声に、驚きを隠せないお兄ちゃん。
「ヤダッ!! ……お兄ちゃんっ! 彼女作ってよぉーっ!!」
ユサユサと身体を揺すりながら必死に懇願すると、そんな私の姿にギョッとした顔を見せるお兄ちゃん。
「突然、何なんだよ……」
「やだやだやだーっ!!」
(彩奈は私の、親友なんだから……っ! 絶対に足なんて引っ張りたくないよっ! ……絶対に嫌っ!!)
「……っ。なんで泣くんだよ……」
ついに泣き出してしまった私を見て困ったお兄ちゃんは、優しく私を抱き寄せるとポンポンと頭を撫でてくれる。
(お願いだから……っ、彩奈を傷付けないでっ。……私の、大切な友達なの。お願い……、お兄ちゃんっ……)
結局、無力な私は心の中でただそう祈る事しかできないのだ。
「一体どうしたんだよ、花音……」
お兄ちゃんの腕の中で、ギュッと服を掴んだままグズグズと泣き続ける私。
そんな私に困惑するお兄ちゃんは、一度小さく溜息を吐くと、私が泣き止むまでずっと優しく頭を撫で続けたのだったーー。
ーーその日の夕食後。
リビングのソファで寛いでいた私は、すぐ隣に座っているお兄ちゃんをチラリと見て口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんて……、どんな女の子が好きなの?」
「……は?」
その唐突な質問に、怪訝そうな顔を見せるお兄ちゃん。
「なんで?」
「えっ!? ……べ、別に!? 何となく……、気になっただけ」
「……へー」
慌てた私を怪しく思ったのか、目を細めてチラリと流し見るお兄ちゃん。
(うっ……。明らかに怪しまれている。どっ……ど、どうしよう……)
いきなり、ピンチに追い込まれてしまった。
(……あっ!)
「そっ……、そういえばっ! イヴの日、お兄ちゃん何処に行ってたの!?」
前から気になっていた事を質問してみると、何とかその場を誤魔化そうとしてみる。
「……何処だっていいだろ」
「良くないよっ! 私にはデート禁止したくせにっ !」
「結局、俺に黙ってデートしてただろ」
ギロリと睨まれ、何も反論できない……。
(はい、仰る通りです……。あの時のお兄ちゃんは、猛烈に恐ろしかったのを……今でもハッキリ、覚えています)
それを思い出した私は、口元をピクリと痙攣らせると、お兄ちゃんの視線に耐えかねて顔を背ける。
(私はただ……っ。彩奈の為に、お兄ちゃんの好みを聞き出そうとしただけなのに……)
気付いたら、お兄ちゃんにお説教されているみたいな状況になってしまった。
(一体、何故……?)
これでは、とても彩奈に協力なんてできそうにない。自分の不甲斐なさにキュッと唇を噛んで俯く。
すると、そんな私を見たお兄ちゃんが小さく溜息を吐いた。
「……別に、誰かとデートしてたとかじゃないから」
(……えっ?)
お兄ちゃんのその言葉に、勢いよく顔を上げると隣に視線を向けてみる。
テレビ画面を見つめながら、それでも私に向けて語り続けるお兄ちゃん。
「クラスの奴らに、呼び出されただけ。でも、思い出したくないから話したくなかったんだよ」
「そう、なんだ……」
あの日を思い出しているのか、ウンザリとしたように大きく溜息を吐いたお兄ちゃん。
(一体、何があったんだろう……)
気にはなるものの、隣で疲れきった様な顔を見せているお兄ちゃんを見て、何だか気の毒になってくる。
当初の目的であった、好みのタイプはまだ聞き出せてはいないものの、イヴに誰かとデートしていた訳ではないと知ってホッとする。
「お兄ちゃんて……。今、彼女いないの?」
これだけは、念の為に確認しておかないといけない。
彩奈がお兄ちゃんからフリーだと聞いたのは、どうやら秋頃の話しらしい。
(もしかしたら……。今は、彼女がいるかもしれないし)
そんな不安があった私は、コクリと小さく唾を飲み込むとお兄ちゃんの返事を待った。
「夏頃から、ずっといないよ」
「……! そうなんだっ! 良かったね!」
お兄ちゃんの言葉に、思わずパッと笑顔を咲かせる。
(っ……良かったね、彩奈っ! お兄ちゃん、彼女いないってよ!)
嬉しそうにニコニコと微笑む私を見て、不審そうに目を細めたお兄ちゃん。
「何が、良かったんだよ?」
「……ぅえっ!? あっ、いやー……。だって、大変でしょ? 彼女がいると……、色々とっ!」
思わずお兄ちゃんの前で『良かった』なんて本音を零してしまった私は、アハハと笑ってなんとかその場を誤魔化してみる。
「彼女がいなくたって、毎日大変だよ……」
そう言って、小さく溜息を吐いたお兄ちゃん。
(……?)
「花音の面倒を見るので手一杯なんだよ、俺は。……彼女なんて、作ってる暇ないだろ」
「……えっ!?」
(わっ……、私っ!? 私のせいで、お兄ちゃんは彼女を作らないの!? そ、それじゃあ……彩奈は? 彩奈の気持ちは……、どうなるの?)
お兄ちゃんの言葉に、ショックで固まってしまった私。
(まさか……。協力するどころか、私が彩奈の邪魔になっちゃうなんて……っ)
応援するなんて言っておきながら、まさか自分が足を引っ張る事になるとは思ってもいなかった。
お兄ちゃんに告白すると言っていた時の、照れながらも幸せそうに微笑んでいた彩奈。そんな姿が、脳裏に思い浮かぶ。
(私は……。そんな彩奈の足を……っ、引っ張ってしまうの? そんなの……、絶対に嫌っ!)
そう思った私は、もの凄い勢いでお兄ちゃんの腕にしがみ付くと、お兄ちゃんの服をギュッと掴んで口を開いた。
「……そんなの嫌っ!! 絶対にダメッッ!!」
突然の大声に、驚きを隠せないお兄ちゃん。
「ヤダッ!! ……お兄ちゃんっ! 彼女作ってよぉーっ!!」
ユサユサと身体を揺すりながら必死に懇願すると、そんな私の姿にギョッとした顔を見せるお兄ちゃん。
「突然、何なんだよ……」
「やだやだやだーっ!!」
(彩奈は私の、親友なんだから……っ! 絶対に足なんて引っ張りたくないよっ! ……絶対に嫌っ!!)
「……っ。なんで泣くんだよ……」
ついに泣き出してしまった私を見て困ったお兄ちゃんは、優しく私を抱き寄せるとポンポンと頭を撫でてくれる。
(お願いだから……っ、彩奈を傷付けないでっ。……私の、大切な友達なの。お願い……、お兄ちゃんっ……)
結局、無力な私は心の中でただそう祈る事しかできないのだ。
「一体どうしたんだよ、花音……」
お兄ちゃんの腕の中で、ギュッと服を掴んだままグズグズと泣き続ける私。
そんな私に困惑するお兄ちゃんは、一度小さく溜息を吐くと、私が泣き止むまでずっと優しく頭を撫で続けたのだったーー。