ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変
※※※
「お兄ちゃん……。私、もう学校辞める」
「は……?」
「だって……っ。もうっ……、もう学校行けないよぉぉおおーー!!」
突然泣き出した私に、焦り始めたお兄ちゃん。
ーー私達は今、誰もいない中庭に来ている。
晒し者になっていた私を、お兄ちゃんが連れ出してくれたのだ。
あの後、マイクを借りて訂正してくれたお兄ちゃん。
『今のは、嘘です!』
そう宣言するお兄ちゃんに、『嘘じゃないよー』と言い出したひぃくん。
物の言い方ってものを、もう少し考えてもらいたい。
結局、おやすみのハグをしてるって事で話しは落ち着いた。
さすがに、毎日一緒に寝ているとは言えない。
『昔からハグしてるんです。俺も、響と毎日してます』
そう言って、身体を張って実演までしてくれたお兄ちゃん。
その光景に、周りの女の子達からは歓喜の悲鳴が上がった。
それでもやっぱり、一部の女の子達からは私に対しての反感の声が上がっていた。
訂正してくれたお兄ちゃんの言葉も、皆がどれだけ信じてくれたかはわからない。
(もしかしたら、誰も信じていないのかも……)
そう考えると、もう学校は辞めるしかないと思った。
反感を買い白い目を向けられ、好奇の視線を浴びる……。そんな四面楚歌な状況を想像すると、恐ろしくて耐えられない。
「大丈夫だって、花音。……絶対に大丈夫だから」
身体を張ってくれたお兄ちゃんには申し訳ないけど、全然大丈夫なんかではない。
「無理ぃ……っ」
中々泣き止まない私を見て、困り果てたお兄ちゃんは小さく溜息を吐いた。
「……花音。学校辞めたら後悔するぞ? ……大体、学校辞めてどうする気なんだ? 編入するのか? 就職でもするのか?」
急に現実的な話をしだしたお兄ちゃんに、何も答えられない私は口を噤んだ。
「……何も考えてないんだろ? 学校を辞めるって事は、そうゆう事なんだぞ?」
(そんな正論言われたら、何も言えないじゃん……っ)
「絶対に大丈夫だから……。どうしても駄目だったら、その時にもう一度考えればいいだろ? ……な?」
お兄ちゃんに説得され、渋々ながらに小さく頷く。
「俺も響もいるし、絶対に守ってやるから。……大丈夫だよ」
そう言って優しく頭を撫でてくれるお兄ちゃん。
(……大体、私をこんな目に合わせた張本人は今何処にいるの?)
「お兄ちゃん……っ。ひぃくんは今、どこにいるの?」
グズグズと涙を拭きながらも、目の前のお兄ちゃんを見上げてそう訊ねてみる。
「あぁ……たぶん、告白されてるんだろ。さっき、女子に呼ばれてどっかに行ったよ」
(告白……。告白されてるんだ……ひぃくん)
そんなの、今に始まった事ではない。
昔からモテるひぃくんは、よく女の子に告白をされていた。
(だけどーー。何だろう、この胸のモヤモヤは……)
今まで考えた事もなかったけど、いつかひぃくんにも彼女ができてしまうのだろうかーー?
そう思うと、何だか悲しくなってくる。
(幼なじみを取られる気がして、寂しい……のかな?)
何だか、よくわからない。
もしかしたら、今会っている人と付き合ってしまうのかもしれないーー。
そう思うと、気になって気になって仕方がなかった。
何だかよくわからない胸のモヤモヤに、私は少しだけ後悔をした。
(お兄ちゃんに聞くんじゃなかった……。もう、忘れよう)
そう思うと、涙を拭いてパッと笑顔を見せる。
「……私、戻るね。お兄ちゃん、さっきはありがとう」
「ん。……じゃあ、お昼にまたな」
「うん。あとでね」
そう答えると、私は中庭を後にしたのだったーー。
※※※
黙ってモグモグとお弁当を食べている私は、チラリと隣にいるひぃくんを盗み見た。
お昼休憩になり、今、私はお兄ちゃん達と一緒に中庭に来ているのだけど……。
(さっきの告白……、どうなったんだろう?)
それが気になって仕方がなかった。
相変わらず隣でニコニコとしているひぃくんからは、いつもと変わった様子は全く感じられない。
(聞いて……、みようかな)
「ひぃくん……。さっきのって……、どうなったの?」
「んー? さっきのって、何?」
お弁当を食べている手を止めたひぃくんは、私を見て小首を傾げる。
「さっき、告白されたんでしょ……?」
少しだけ顔を俯かせると、チラリと様子を伺う。
すると、ピタリと固まったひぃくんが両目を大きく見開いた。
(え……っな、何? 聞いちゃマズかったのかな)
「か……っ、花音……花音……っ」
瞳を小さく揺らして、プルプルと震える手を私に向けて伸ばしたひぃくん。
そのままガバッと私に抱きついたかと思うと、突然大きな声を上げた。
「っ……可愛すぎるよ、花音っ! お嫁に来てくれるの!? ありがとう!! 大切にするからね!!」
(どういうこと……っ? 私の質問は、どこにいったの……?)
「ーーおい、響」
ギロリとひぃくんを睨みつけるお兄ちゃん。
その声に振り向いたひぃくんは、嬉しそうにして口を開く。
「翔っ! 聞いた!? 花音がお嫁に来てくれるって!!」
そう言ってニコニコと微笑むひぃくん。
私の腕を引っ張ってひぃくんから離すと、小さく溜息を吐いたお兄ちゃん。
「……聞いてないし、言ってない」
シレッとした顔をするお兄ちゃんは、自分の隣に私を座らせると再びお弁当を食べ始める。
「言ったよー! 確かに、言った!!」
(いや……。言ってないです、ひぃくん。私そんな事一言も言ってないよ……。そんな事より、私の質問はスルーですか? 結構勇気出して聞いたのにな……)
そう思うと、ガックリと肩を落とす。
「告白が気になったって事は、俺の事が好きだって事でしょ!?」
ーーー!!?
ひぃくんの発した言葉で、私の顔に一気に熱が集中し始める。そして、見る見る内に真っ赤に染まってしまった私の顔。
まるで茹でダコのように真っ赤になってしまった私は、ひぃくんに向けて勢いよく声を上げた。
「っ……ちっ、違う! 違うもんっ!!」
(なんて事だ……っ! ひ……っ、ひぃくんを好きだなんて……! そんな事あるわけない! 違う、絶対に違う……っ!)
カーッと熱くなってゆく顔に、自分でも動揺が隠せない。
確かにひぃくんの事は好きーー。
だけど、恋とかではなくて……幼なじみとして好きなだけ。
大体、さっきだってひぃくんのせいで酷い目に合ったのだ。
そんな人を、好きになる訳がない。
ーーそう、自分に言い聞かせる。
「かの〜んっ!」
ーーー!?
嬉しそうな声を上げ、いきなり飛び付いてきたひぃくん。
そんなひぃくんを支えきれなかった私の身体は、ゆっくりと後ろへ向かって傾いてゆくーー。
(えっ……ここ、ベンチ。落ちるーーっ!)
ギュッと瞼を閉じると、その衝撃に備える。
(ーーあ、あれ……? 痛く……、ない)
恐る恐る瞼を開くと、目の前にはひぃくんらしき胸板が見える。
「……っ。おい、ふざけんな響!」
背後から聞こえるお兄ちゃんの声。
どうやら、私はお兄ちゃんを下敷きにして倒れているらしい。きっと、私を庇ってくれたのであろうお兄ちゃん。
上にはひぃくん、下にはお兄ちゃん……。
(笑えない……。何この、サンドイッチ)
「早く退け、重い」
(ごめんなさい……、お兄ちゃん。私、動けません。苦しくて声すら出せません……っ)
全く退く気のないひぃくんは、私の上で「かの〜ん。かの〜ん」と嬉しそうな声を出している。
(く……、苦し……っ)
苦しさから少しだけ顔を横へと動かしてみると、中庭にいる生徒達が視界に入ってくる。
三人で抱き合ったまま、地面に転がっている私達。
そんな私達を見て、驚きに目を見開いている人達やクスクスと笑っている人達ーー。
どうやら、また私は皆の前で醜態を晒してしまったらしい。
(……もう、嫌……っ。なんでいつもひぃくんてこうなのよ……っ。絶対にひぃくんを好きだなんて、有り得ないから……)
私の上で嬉しそうな声を出しながら揺れているひぃくん。
そんなひぃくんに抱きしめられながら、苦しさに顔を歪める。
(っ……お願い、揺れないで……。苦しいし、恥ずかしい……っ)
ーーその後、お兄ちゃんが無理矢理ひぃくんを退けるまでの間、私はずっと潰れた蛙のような呻き声を上げていたのだった。
「お兄ちゃん……。私、もう学校辞める」
「は……?」
「だって……っ。もうっ……、もう学校行けないよぉぉおおーー!!」
突然泣き出した私に、焦り始めたお兄ちゃん。
ーー私達は今、誰もいない中庭に来ている。
晒し者になっていた私を、お兄ちゃんが連れ出してくれたのだ。
あの後、マイクを借りて訂正してくれたお兄ちゃん。
『今のは、嘘です!』
そう宣言するお兄ちゃんに、『嘘じゃないよー』と言い出したひぃくん。
物の言い方ってものを、もう少し考えてもらいたい。
結局、おやすみのハグをしてるって事で話しは落ち着いた。
さすがに、毎日一緒に寝ているとは言えない。
『昔からハグしてるんです。俺も、響と毎日してます』
そう言って、身体を張って実演までしてくれたお兄ちゃん。
その光景に、周りの女の子達からは歓喜の悲鳴が上がった。
それでもやっぱり、一部の女の子達からは私に対しての反感の声が上がっていた。
訂正してくれたお兄ちゃんの言葉も、皆がどれだけ信じてくれたかはわからない。
(もしかしたら、誰も信じていないのかも……)
そう考えると、もう学校は辞めるしかないと思った。
反感を買い白い目を向けられ、好奇の視線を浴びる……。そんな四面楚歌な状況を想像すると、恐ろしくて耐えられない。
「大丈夫だって、花音。……絶対に大丈夫だから」
身体を張ってくれたお兄ちゃんには申し訳ないけど、全然大丈夫なんかではない。
「無理ぃ……っ」
中々泣き止まない私を見て、困り果てたお兄ちゃんは小さく溜息を吐いた。
「……花音。学校辞めたら後悔するぞ? ……大体、学校辞めてどうする気なんだ? 編入するのか? 就職でもするのか?」
急に現実的な話をしだしたお兄ちゃんに、何も答えられない私は口を噤んだ。
「……何も考えてないんだろ? 学校を辞めるって事は、そうゆう事なんだぞ?」
(そんな正論言われたら、何も言えないじゃん……っ)
「絶対に大丈夫だから……。どうしても駄目だったら、その時にもう一度考えればいいだろ? ……な?」
お兄ちゃんに説得され、渋々ながらに小さく頷く。
「俺も響もいるし、絶対に守ってやるから。……大丈夫だよ」
そう言って優しく頭を撫でてくれるお兄ちゃん。
(……大体、私をこんな目に合わせた張本人は今何処にいるの?)
「お兄ちゃん……っ。ひぃくんは今、どこにいるの?」
グズグズと涙を拭きながらも、目の前のお兄ちゃんを見上げてそう訊ねてみる。
「あぁ……たぶん、告白されてるんだろ。さっき、女子に呼ばれてどっかに行ったよ」
(告白……。告白されてるんだ……ひぃくん)
そんなの、今に始まった事ではない。
昔からモテるひぃくんは、よく女の子に告白をされていた。
(だけどーー。何だろう、この胸のモヤモヤは……)
今まで考えた事もなかったけど、いつかひぃくんにも彼女ができてしまうのだろうかーー?
そう思うと、何だか悲しくなってくる。
(幼なじみを取られる気がして、寂しい……のかな?)
何だか、よくわからない。
もしかしたら、今会っている人と付き合ってしまうのかもしれないーー。
そう思うと、気になって気になって仕方がなかった。
何だかよくわからない胸のモヤモヤに、私は少しだけ後悔をした。
(お兄ちゃんに聞くんじゃなかった……。もう、忘れよう)
そう思うと、涙を拭いてパッと笑顔を見せる。
「……私、戻るね。お兄ちゃん、さっきはありがとう」
「ん。……じゃあ、お昼にまたな」
「うん。あとでね」
そう答えると、私は中庭を後にしたのだったーー。
※※※
黙ってモグモグとお弁当を食べている私は、チラリと隣にいるひぃくんを盗み見た。
お昼休憩になり、今、私はお兄ちゃん達と一緒に中庭に来ているのだけど……。
(さっきの告白……、どうなったんだろう?)
それが気になって仕方がなかった。
相変わらず隣でニコニコとしているひぃくんからは、いつもと変わった様子は全く感じられない。
(聞いて……、みようかな)
「ひぃくん……。さっきのって……、どうなったの?」
「んー? さっきのって、何?」
お弁当を食べている手を止めたひぃくんは、私を見て小首を傾げる。
「さっき、告白されたんでしょ……?」
少しだけ顔を俯かせると、チラリと様子を伺う。
すると、ピタリと固まったひぃくんが両目を大きく見開いた。
(え……っな、何? 聞いちゃマズかったのかな)
「か……っ、花音……花音……っ」
瞳を小さく揺らして、プルプルと震える手を私に向けて伸ばしたひぃくん。
そのままガバッと私に抱きついたかと思うと、突然大きな声を上げた。
「っ……可愛すぎるよ、花音っ! お嫁に来てくれるの!? ありがとう!! 大切にするからね!!」
(どういうこと……っ? 私の質問は、どこにいったの……?)
「ーーおい、響」
ギロリとひぃくんを睨みつけるお兄ちゃん。
その声に振り向いたひぃくんは、嬉しそうにして口を開く。
「翔っ! 聞いた!? 花音がお嫁に来てくれるって!!」
そう言ってニコニコと微笑むひぃくん。
私の腕を引っ張ってひぃくんから離すと、小さく溜息を吐いたお兄ちゃん。
「……聞いてないし、言ってない」
シレッとした顔をするお兄ちゃんは、自分の隣に私を座らせると再びお弁当を食べ始める。
「言ったよー! 確かに、言った!!」
(いや……。言ってないです、ひぃくん。私そんな事一言も言ってないよ……。そんな事より、私の質問はスルーですか? 結構勇気出して聞いたのにな……)
そう思うと、ガックリと肩を落とす。
「告白が気になったって事は、俺の事が好きだって事でしょ!?」
ーーー!!?
ひぃくんの発した言葉で、私の顔に一気に熱が集中し始める。そして、見る見る内に真っ赤に染まってしまった私の顔。
まるで茹でダコのように真っ赤になってしまった私は、ひぃくんに向けて勢いよく声を上げた。
「っ……ちっ、違う! 違うもんっ!!」
(なんて事だ……っ! ひ……っ、ひぃくんを好きだなんて……! そんな事あるわけない! 違う、絶対に違う……っ!)
カーッと熱くなってゆく顔に、自分でも動揺が隠せない。
確かにひぃくんの事は好きーー。
だけど、恋とかではなくて……幼なじみとして好きなだけ。
大体、さっきだってひぃくんのせいで酷い目に合ったのだ。
そんな人を、好きになる訳がない。
ーーそう、自分に言い聞かせる。
「かの〜んっ!」
ーーー!?
嬉しそうな声を上げ、いきなり飛び付いてきたひぃくん。
そんなひぃくんを支えきれなかった私の身体は、ゆっくりと後ろへ向かって傾いてゆくーー。
(えっ……ここ、ベンチ。落ちるーーっ!)
ギュッと瞼を閉じると、その衝撃に備える。
(ーーあ、あれ……? 痛く……、ない)
恐る恐る瞼を開くと、目の前にはひぃくんらしき胸板が見える。
「……っ。おい、ふざけんな響!」
背後から聞こえるお兄ちゃんの声。
どうやら、私はお兄ちゃんを下敷きにして倒れているらしい。きっと、私を庇ってくれたのであろうお兄ちゃん。
上にはひぃくん、下にはお兄ちゃん……。
(笑えない……。何この、サンドイッチ)
「早く退け、重い」
(ごめんなさい……、お兄ちゃん。私、動けません。苦しくて声すら出せません……っ)
全く退く気のないひぃくんは、私の上で「かの〜ん。かの〜ん」と嬉しそうな声を出している。
(く……、苦し……っ)
苦しさから少しだけ顔を横へと動かしてみると、中庭にいる生徒達が視界に入ってくる。
三人で抱き合ったまま、地面に転がっている私達。
そんな私達を見て、驚きに目を見開いている人達やクスクスと笑っている人達ーー。
どうやら、また私は皆の前で醜態を晒してしまったらしい。
(……もう、嫌……っ。なんでいつもひぃくんてこうなのよ……っ。絶対にひぃくんを好きだなんて、有り得ないから……)
私の上で嬉しそうな声を出しながら揺れているひぃくん。
そんなひぃくんに抱きしめられながら、苦しさに顔を歪める。
(っ……お願い、揺れないで……。苦しいし、恥ずかしい……っ)
ーーその後、お兄ちゃんが無理矢理ひぃくんを退けるまでの間、私はずっと潰れた蛙のような呻き声を上げていたのだった。