そしてまた、桜はさきほこる
「先輩・・・」


俺の胸に顔をうずめて、さきちゃんは泣いていた。


俺を呼ぶ声は、弱々しくかすれていた。


愛しくてたまらない。離したくない。


このまま、ずっと抱きしめていたい。


「さきちゃんよく顔見せて?」


「いや・・・」


さきちゃんはかすれた声で首を横に振る。


俺は、さきちゃんの背中に回していた手を肩に置き、少し離す。


もう涙でぐしゃぐしゃじゃん。


それでも可愛すぎる。さきちゃんのすべてが好きだ。


俺は、さきちゃんのあごに指をそっと添えて、唇を重ね合わせた。


冬の名残を感じさせる冷たい夜風が、そんな二人のそばを吹き抜けていった。
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