そしてまた、桜はさきほこる
「さきちゃん、今日はありがとう。そろそろ行くね」


「先輩に出会えてほんとに良かったです。向こうに行ってもずっと応援してますし、これで最後じゃないですよね?」


「俺もさきちゃんと出会えて良かった。これからのさきちゃんが幸せでありますようにってずっと祈る。たくさんの出会いがあると思うし、いつか絶対また会える日が来る」


ちゃんと笑えているだろうか。手は震えてないだろうか。


さきちゃんのためにもここで悲しい顔をするわけにはいかない。


弱くて情けない俺の、せめてもの強がりだ。


「さきちゃん、ありがとう。行ってきます」


その言葉を最後に、俺は改札へと向かう。


自分の体にむちを打ち、歩みを進める。


そして、そのまま改札を通ろうとした俺の腕は、細い綺麗な手に止められた。


その手は力強く、俺を一歩も動かさなかった。
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